DXを関西に中小企業へ!DXサムライ Vol.01イベントレポート

10月26日(水)あべのハルカス25F会議室にて、関西の中小企業向けDXイベント「DXサムライ」を開催しました。

「DXサムライ」とは、株式会社クリエイティブユニバースの新たな取り組みの一つとなる「DXBoot(ディーエックスブート)」のサービス展開に先駆けて開催。

「No DX No Future ~DX無くして未来無し~」の理念に基づき「企業の体質や考え方に『切り込み』を入れるように、未来を変えたいと思えるイベント」をテーマに、関西のDX推進を盛り上げ、IT活用やDX推進のヒントを持ち帰っていただくことを目指したセミナー形式イベントです。

記念すべき第一回は「株式会社グッドマネジメント総合研究所」代表取締役社長 加藤利彦さま(▼写真中央)、「株式会社サムシングファン」田中良和さま(▼写真右)をゲストにお招き。中小企業でのIT活用や動画活用のポイントなどを伺いました。

記念すべき第一回目を飾る登壇者の面々。左より弊社代表の樫本と、ゲストを務める加藤利彦氏と田中良和氏が並ぶ


平日の日中の開催となりましたが、ご来場の方々からは「非常にためになる内容だった」「実践に向けた具体的な内容が多く、やることのイメージができた」「いま抱えている問題の解決につながりそうなヒントが得られた」など、大変好評をいただきました。

本イベントレポートでは登壇内容をダイジェストで紹介しながら、それぞれの切り口で語られるIT活用・DX推進につながるヒントを、当日の様子とともにお伝えします。

会場のあべのハルカス会議室の様子

「IT参謀が語る、これから必須のIT活用」株式会社グッドマネジメント総合研究所 代表取締役社長 加藤利彦さま

株式会社グッドマネジメント総合研究所 加藤利彦さま
フリーランスのデザイナーを経て、Chatwork株式会社へ創業メンバーとして入社。
2008年に常務取締役に就任。経営全般に関わりながら、1,000社以上の中小企業のIT化サポート。2011年にChatwork株式会社のグループ会社(現在は資本関係なし)として独立。
日本初のGoogle公式オンラインリセラー。

トップバッターは甚兵衛に身を包み「黒子」をコンセプトにコンサルティングを展開しているとして、普段からこの姿で仕事に取り組んでいますと語る加藤さまの軽快なトークでスタート。

今回は「ChatWork」や「Google Workspace」の活用例をもとに、中小企業でも使いやすいツールを軸にした「効率を上げながら売上を上げる考え方」について、IT活用のヒントをご紹介いただきました。

情報の一元化と役割わけの重要さ

IT活用の前に持っておきたい前提として、業務は「コミュニケーション」「実務」の2つに分けられると説明。

活用ツールはそれぞれで分けて設計・考えることが大切とされました。

まずは導入を始めている企業も多い「チャットツールの活用」について。

「報告・連絡・相談」など、業務内で行われるコミュニケーションはとてもコストがかかるもの。チャットツールを導入するメリット、やり取りを効率化する活用方法をお伝えいただきました。

一方で、チャットツールでの重要な相談は避ける、緊急度が高いことには使わない、常に監視せず見る時間を全体で決める。など、すべてをチャットツールに頼らないことも注意点として挙げられました。

○オススメグループ例は「社長が考えていることチャット」

主に社長の投稿専用グループで、いま考えていること、最近会った人や興味深い情報の共有など、専用チャットに投稿を続けることで、会社全体の意思疎通を向上させる効果があるとのこと。

中小企業に限らず社長の考えがうまく伝わらないことで、会社の方向性や理念が社員に浸透しないことが課題にある組織も少なくないでしょう。そうした問題もChatWorkが解決の糸口になるかもしれません。

○Google Workspaceで実務を効率化

次は実務の効率化につながるGoogleが提供するグループウェア「Google Workspace」の活用について、具体例を上げながら紹介されました。

Google Workspace(グーグル ワークスペース)とは:
Googleが提供する組織向けのオンライン アプリケーション セット。
GoogleドキュメントやGmail、Google Driveを始めとした便利なアプリソフトやツールを、企業・組織内でビジネス用グループウェアとして活用できる、高度なセキュリティを持った安全性の高いクラウドサービスです。

ここで『業務時間中に何かを探している時間はどれくらいあるでしょうか』と質問。

業務中に何かを探している時間は、一般企業では年間で平均160時間もあると言われているそうです。
仕事に必要な資料やデータを探す時間は、Google Driveなどのクラウドストレージを使うことで短縮できます。

Google Driveの検索機能を使えば、関連するキーワードや日付、正確な書類の名前があやふやでも、キーワードから候補を簡単に検索可能に。
またオススメのファイル名の付け方やファイル構成の作り方についても紹介されました。

DX推進は働き方の改革にもつながる

またチャットツールを活用したことで、働き方の改善へつながった事例紹介と理由にも切り込みました。

スライドの例ではチャットツールの導入により、1日のうち6時間がコミュニケーションに費やされていた状況を、2.8時間に圧縮。新たにチャットをする時間が増えたことを考慮しても、約3時間の捻出に成功しました。

この結果には会場全体が前のめりになり、興味の高さが伺えました。

働き方改革や労働力の確保も、多くの中小企業が直面する経営課題です。

チャットツール導入をきっかけに、限られた業務時間が効率化されれば、残業時間の短縮につながります。やるべき仕事に集中できる環境は生産性アップにつながり、業務意欲の向上にも期待できるでしょう。

ITツールの浸透にはルール設定や仕組みが不可欠

新しいツールの導入後に経営者を悩ませるのは、ルールの設定です。

チャットツールもクラウドツールも、ルールや仕組みの設計がなければ、現場の混乱は避けられません。とくに実務と直結し、編集する媒体が変わる可能性の高いWordやExcelなどは、便利とわかっていても移行はなかなか難しい課題です。

この課題にもツールの浸透に取り組む順番をステップでお伝え。
とくに効果的としたのは、多くの人や企業が愛用する「ExcelをGoogleスプレッドシートに置き換えることから始めるステップ」です。

ツールの導入から3か月ほどは週に改善ミーテイングを入れる、現場意見のヒアリングが重要とされました。

また社内全体のルール設計例も紹介。一度にすべてを実行するのは難しいとしたうえで、段階的に導入・浸透させることで、ツールへの理解は自然と深まっていくと語られました。

株式会社グッドマネジメント総合研究所
URL:https://www.gmsouken.co.jp/

「動画のプロが語るコロナ禍以降の動画活用と動画DX」株式会社サムシングファン 田中良和さま

株式会社サムシングファン 田中良和さま
東京・大阪・名古屋を中心に、映像制作・CM・PRビデオ制作や「動画DX®」の提案、動画マーケティング支援を展開する動画制作/映像活用会社。年間2,300件以上の動画プロジェクトを担当し、動画効果分析ツール
DOOONUTの開発・動画クリエイター派遣サムジョブ・ライバー事業など多彩な事業を展開。

「動画DX®」を始めとした、動画や映像制作を中心に、さまざまなサービスを展開する株式会社サムシングファン。
田中さまからは動画のスペシャリストとして、中小企業でも実践したい動画活用のポイントや、動画をツール・手段として取り入れるヒントを多くの具体例や実績作品を見ながらご紹介いただきました。

動画のプロ視点から見る動画の役割

動画はテキストやスライドよりも、短時間で多くの情報を伝えられるメディアです。
動画を使ったPRの取り組みやYouTubeでノウハウの発信に取り組んでいる企業も多くあるでしょう。

さらに動画には目と耳で情報を受け取るため「わかりやすく」「記憶に残りやすい」という大きなメリットがあります。

この特徴は外向けだけではなく内側、社内の情報共有や人材育成にもとても効果的に活用できます。

また自社が提供する動画配信・分析サービス「DOOONUT(ドーナッツ)」のデータ分析を参照しながら、動画によるコミュニケーション活用の現場アンケート結果や効果的と感じられた要素を数字とともに紹介されました。

○始めやすい動画活用のオススメは「マニュアル・教育動画」

とくに取り組みやすい動画活用の事例として、社内の人材教育やマニュアル動画の制作についても解説されました。
繰り返し行う説明や実際に操作を見なければわからない機器、ITツールの使い方は動画にしてストックすることが重要とのこと。

社内で使うものなので、撮影はスマホでもOK。Webツールの使用方法は無料のキャプチャーソフトを使えば初期費用もほとんどかかりません。
また社内のマニュアルやノウハウが充実することで、自分で疑問点を解決する意欲や使い方の復習ができるなど、教育面から社員の自発性を高めることもできます。

中小企業の中には人手不足や労働力の確保問題から、新しい人材を育成する余裕がない、育成不足から人が定着しないなどの問題を抱えている会社もあるかもしれません。
人材教育の負担が軽減できれば、採用人数を増やすなどの労働力の確保に向けて新しい施策を講じることも可能になるでしょう。

広告じゃない「ブランデッドな動画」の活用事例を紹介

第二章では内部向けの動画活用に続いて、お客さま向け・PRでの動画活用についても解説が行われました。

広報やPRに使われる動画は「プル型」「プッシュ型」の2種類にわけられ、それぞれ役割が異なります。

簡単に違いを述べると、プル型は「お客さまが自ら情報を受け取りに行くメディアの形」一方のプッシュ型は「提供側のタイミングで一般の多くの方に一方的に情報を伝えるメディアの形」に区別できるとのこと。

たとえばYouTubeなどで自分が知りたいことを調べて見る動画は「プル型」、動画広告やテレビCMは意図せず勝手に流れてくる情報のため「プッシュ型」といえます。

今回は「プル型」の動画が重要とし、ただの広告で終わらない「ブランデッドコンテンツ」を意識することが大切と述べました。
会社の価値やストーリーをお客さまに伝えることで、段階を踏みながら好きになってもらう疑似体験をしてもらえるかがポイントになります。

ブランデットコンテンツ:
企業やブランド価値を確立するために作る動画。
伝えたいメッセージや理念などをストーリー化して伝える役割を担う。

中小企業に関わらずお客さまに向けた情報を動画で発信する際は、どちらのタイプかを明確にして制作に入る必要があります。
さらにお客さまがより自発的に情報を選択して受け取る動線として「インタラクティブ動画」制作の取り組みについても紹介されました。

インタラクティブ動画とは 「お客さまが触れる仕掛けを取り入れた動画」 のこと。

体験と情報の提供を同時に行える魅力的な動画ですが、自社で制作しようと思うと難しいコンテンツ。そんなインタラクティブ動画の制作にも、相談や提案にのってくれるそうです。

動画を積極的に取り入れるための予算の考え方

最後には、積極的に動画活用を取り入れる中で起こる「予算の問題」についても切り込みました。

動画は自社での内製化・外注問わず、投資費用が高くなってしまう傾向があります。その問題にも、どの用途に動画を活用するのか、提供するお客さまの段階に合わせて、限られた予算を投資することが大切と説明しました。

登壇の最初にも説明されたマニュアル動画のように、低コストで実現できる動画活用もあります。そうした投資するべき動画やタイミングを、いきなり社長が判断するのは難しいことです。

そのような自社に専門家がおらず判断に迷う場合についても、相談にのっているとのこと。

動画のスペシャリストでありながら、動画だけですべての解決を考えるのではなく、マーケティングやお客さまのフェーズに合わせ、動画を手段として活用することが大切と語られました。

株式会社サムシングファン
URL:https://www.somethingfun.co.jp/

「中小企業DX事例から見るスモールステップDX」株式会社クリエイティブユニバース 代表取締役社長 樫本祐輝

株式会社クリエイティブユニバース代表 樫本祐輝
「誰もが未来を描いて輝ける社会へ」をミッションにwebサービスやアプリのサービス・デザイン設計などUXコンサルティングを軸としたクリエイティブコンサルティングを手掛ける。企業向けにweb・IT活用などをサポートする中でこれまでやってきた伴走型のIT顧問事業を「DXBoot」としてサービス化。

本イベントの主催である株式会社クリエイティブユニバース代表 樫本さんは「クリエイター支援」「UI/UXのクリエイティブコンサルティング」「IT顧問・DX支援」の3つの軸で活動をされています。

今回は長年、多くの企業・個人の支援やコンサルティングをされた経験から、DX支援事業「DXBoot」のサービス内容にもつながるDX推進のスモールステップ、システム開発に関するポイントについてご紹介いただきました。

DX推進の新たなロードマップ「スモールステップDX(SSDX)」の提案

DXを浸透させる全体像として、『担当者の IT教育から始める 「スモールステップDX(SSDX)」』という、3つの大きなステージ、5つのスモールステップをロードマップとして提案しました。

多くの企業にとってDX推進に二の足を踏んでしまう理由は、社内に浸透・うまく回ったときのモデルケースやロードマップがわからない部分にあります。

進めるステップと目指すステージが明確になれば、自社の状況を見て次に取り組むべきことがわかり、自然と進めようとする流れがつくれます。

○キーとなるのは「小さな自動化とアイデア」

スモールステップで最初に実践を目指すのは「小さな自動化とアイデア」を促すことと説明。

IT化の壁となるのは、ツールへの理解が深まらず「決められたことしかできない」と思い込んでしまうこと。「もっといい使い方があるかも」と考えられる知識や余裕を持つことが、組織のDX推進には大切と語られました。

先の登壇内容でも参考になるルール設定や具体例の紹介がありましたが、最終的に自社にぴったりの方法は、自分たちで見つけていく必要があるからです。

その際に必要となるのは現場の社員に、アイデアや気づきを共有できる余裕や環境があるかがとても重要。また過去のコンサルティング例から、アイデアやツールの可能性を考えられる企業は、自然と業績も伸びていく傾向があったようです。

ツールの浸透やうまくDX推進が進まないと息詰まる時こそ、誰かのアイデアで問題が解決に向かうかもしれません。

システム開発や受注開発の「予想外」に備えるポイント

環境つくりの重要さを伝えた中で、自社で独自のシステムをつくる、または開発を外注する際の注意点にも切り込みました。

自社の事業に合わせたシステムの開発に取り組む場合 「想定していなかったこと」 がほぼ発生します。

その原因は当初の設計や開発者に問題があるのではなく、システムは現場で運用してからわかることが多いからです。

○予算を無駄に失わないための解決例「β版の運用」「開発と運用の費用を分ける」

解決策としては「β版の運用」「開発と運用の費用を分ける」などがあげられました。

運用後の調整を予算や計画に入れず進めてしまうと、問題が起きた際の対策が難しくなり、プロジェクト全体に大きなダメージを与えてしまいます。

また開発を発注する場合は、開発側と発注側で意図をすり合わせたり、提案不足による齟齬が起こりやすいことも、システム開発で注意したいポイントと合わせて伝えました。
DXBootでは、そうした提案不足を助けるサポートも提供可能と説明されました。

アイデアが生まれる環境と知識を持つベースを作る

最後はあらためて、企業・組織のDX推進に重要なポイントを3つにまとめました。

とくに雑談や余白のある時間は、ツール活用のアイデアや自社に必要な改善ポイントの発見につながり、土台となる環境つくりに取り組む必要があると述べました。

また流行りのITツールはただ便利だから使うだけではなく、機能やツールを使った業務の効率化や働き方改善など、仕組みや習慣に取り入れやすいことも導入の検討を勧めるポイントになっています。

○「イノベーター理論」で理解する組織浸透の流れ

また 「イノベーター理論」 の考え方から、組織の中でアイデアやツール活用を得意とする人々が中心になり導入の下地を作っていくことで、ゆっくりと組織の内部に浸透させていく方法についても紹介されました。

イノベーター理論とは、1962年スタンフォード大学のE.M.ロジャーズ教授の著書“Diffusion of Innovations”にて提唱された最も古い社会科学の一つと言われています。参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Diffusion_of_innovations

実際に新しいモノ・考え方が文化として浸透するまでにたどる流れやパーセンテージを知っていれば、どの層を増やすのか・行う施策がどの層に向けたものか具体的に整理できるでしょう。

ロードマップと統計データを参考にすれば、漠然とDX推進やIT化はよくわからないという状態から、まず目の前にある実践をすべきことが明確になるはずです。

知らない・よくわからないことは実践できません。ですが、知ることで行動を起こせるチャンスは格段に増やせます。

「知らないはリスク」を減らすことが、関西全体のDX推進につながると信じて、今後も情報発信を続ける展望とともに「DXサムライ」イベントは締めくくられました。

株式会社クリエイティブユニバース
URL:https://c-u.co.jp/

まとめ:DX推進への取り組みについて

DX推進への取り組みは、ただデジタルツールを取り入れただけで満足するのではなく、会社の未来、そこで働く一人一人の将来をより良いものに変えられる可能性を秘めています。

うちには無理!面倒くさいと決めつけずに、ぜひ一緒にDX推進について考えてみませんか。

今後もDXサムライでは、さまざまなゲストをお招きしながら関西のDX推進に切り込むイベントを開催していきます。

ぜひFacebookのフォローやWebサイトをブックマークしていただき、今後の情報・次回のイベント開催も楽しみにお待ちください。

イベントレポート記事:フルカワカナコ
写真:川越貴文